014_契約書を結ぶまでの実務プロセス

道のりは長い・・・。そう思っていただいた方がよろしいでしょう。
例えば、当社(以下A社)では、今度ある会社(B社)に、自社の危機管理ルールに関するEラーニング研修教材を作ってもらい、受講者管理を含めた業務委託をしたい、という場合。
※以下に記載するのは、あくまでも一般的なサンプル事例です。実際にはご自身の会社の所定手続きをよくご確認ください。

①NDA
まず、B社にA社の危機管理の実態を説明のうえ、研修教材が作成できるのか聞いてみなければなりません。そこで、自社の機密情報を含む危機管理体制全般に関する資料をみてもらうこととなりました。
☑ NDA(機密保持契約)を結びましょう。そのためはA社内でひな形を入手して、B社に確認。修正要望があったら法務に相談し、OKをもらえたら、稟議決裁、締結手続きです。

②見積もり取得
B社に研修資料を作成してもらえるということであれば、次はコストです。
☑ 相手から見積もりをもらい、部署の予算で収まるかを確認ましょう。この時点で上司にプレゼンします。OKをもらったら、先に進めます。

③個人情報委託先チェック
B社には受講者情報(社員の個人情報)を委託して、受講者管理をやってもらうこととなりました。
☑ B社が個人情報の委託先として大丈夫かどうかをチェックしなければなりません。A社内に「個人情報委託先チェックシート」のようなものがあれば。それをB社に記載のうえ提出し、内容を確認しましょう。場合によっては、A社内の法務部門等の承認をもらってください。

④反社チェック
B社は初めて取引をすることになるので、A社の社内規程では、B社や代表者等が反社会的勢力に該当しないよう照会手続きを踏む必要があります。
☑ 社内手続きに則り、照会をおこなってください。場合によっては、A社内の所管部門等の承認をもらてください。

⑤下請法チェック
B社の資本金の額や、今回の取引が下請法の4つの類型に該当するかどうかのチェックです。
☑ 今回の研修資料の作成委託が下請法に定める「情報成果物作成委託」取引に該当するかしないかを確認してください。
☑ 併せてB社の資本金の金額を調べて、法定基準に該当するかしないかを確認してください

⑥知的財産関連の調整
作成した研修資料の著作権をA社・B社どちらに帰属させるか等の取り決めが必要です。
☑ 譲渡を受けず、許諾を受けるのであれば、どこまで改変していいか調整してください

⑦契約内容のリーガルチェック
これに一番時間を要する場合があります。B社に契約書のひな形の提示を受けた場合はそのままOKとせずせず、速やかに法務担当者(いなければ外部の専門家)のリーガルチェックを受けてください。いろいろポイントがありますよ。
☑ これまでの交渉内容が網羅されているか
☑ 個人情報の取り扱い条項をどのような内容にするか
☑ 下請法3条の書面をどう交付するか。支払サイト等下請法違反がないか
☑ 知的財産関連の処理
☑ その他、一方に不利益、不平等になっていないか

⑧社内稟議
今回B社とどういう取引をするか、見積り書、契約書案などをまとめて、しかるべき決裁者に向けた稟議を起案します。

➈契約印の押印
社内稟議が決裁になったら、A社内の所管部署に契約書に代表者その他の権限者の契約印を押印してもらってください。もちろん、B社にも。日付を埋めるのは、後に押印する会社ですよ。参照

⑩契約の保管
すべて終わったら、契約完了です。保管しましょう。
で、この時点で「あ、誤植が!」参照

・・・ふう。大変ですよね。

ここで申しあげたいのは、個々のプロセスの細かいところではなく、ズバリ「契約書の締結は、なかなか大変で時間がかかる」ということです。
タイムマネジメントが命です。覚悟してください。

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