009_契約書の訂正

訂正をすること自体はぜんぜんいけないことではありません。
「あ、そうだ令和だ。平成31年のまま調印しちゃった。わー」
みたいなことは、今もっともタイムリーなあるあるランキング第1位ではないでしょうか。

ずばり、迷わず訂正しましょう。が、訂正の三原則があります。
 ☑ 相手に無断で訂正したらダメ!
 ☑ 訂正に修正液を使ったらダメ!
 ☑ 訂正だけが対処方法ではない!

1 相手に無断で訂正したら絶対だめです
このブログでは何度か言いましたが、当事者の意思の合致で契約が成立し、法的な拘束力が生まれるのですから、勝手に修正することは契約当事者の意思に反することであり、契約自体の効力が疑われることとなります。
こうした民事上の話だけでなく、そもそも当事者間の法律ともいうべき重要な文書を権限なく書き換えることは、文書改ざん行為(=偽ること)であり、明らかなコンプライアンス違反です。
あくまでも、訂正は、契約当事者の合意のもと行わなければなりません。

2 訂正に修正液を使ったら絶対だめです
修正液(修正テープ)では、訂正後の文書を見たとき、何を訂正したか履歴が分からなくなってしまいます。間違いを塗りつぶすことは原因の隠蔽行為(=隠すこと)であり、これもコンプライアンス違反です。かといって、そのままにしておく(=放置することも)コンプライアンス違反です。
ということで、訂正の証跡はきちんと残しましょう。
具体的には、
 ① 削除したい部分に二重線を引き、追記したい文言を吹き出し付きで挿入
 ② そのうえで、訂正箇所の脇または欄外に「●字削除 〇字挿入」と記載
 ③ ②の訂正箇所または欄外に契約当事者の甲乙それぞれの契約印を押印

3 訂正だけが対処方法ではありません
1文字2文字なら訂正すればいいですが、結構な文字数を訂正するとなると、見栄えがめちゃくちゃ悪くなります。確かに、適切な訂正とは、「誤りを隠さず偽らず放置しなかった」というコンプライアンス行動の黄金の証跡にはなりますが、あんまり汚れているのもねえ。いまいち黄金じゃないですよねえ。

ということで、おススメは「覚書」の締結です。つまり、間違いを訂正することを合意する書面をもう1本結ぶ、というイメージです。
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                覚 書

甲および乙は、〇年〇月〇日に締結済の〇〇契約書(以下「原契約」という。)
について、以下のとおり合意する。

第1条 原契約第〇条〇項を以下のとおり置き換える。
 ******** (直した後の文言を書く)
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という感じできっちり締結しておけば、原契約の文言は残るし、本覚書に当事者が承諾した記録も残ります。

いずれにしても、営業のご担当者自ら対処せず、会社の法務担当者や、会社に法務担当者がいなければ外部の専門家に相談した方が無難だと思います。
押印が必要ということは、契約書原本について、相手方の会社との往復が発生します。なるべく効率的にやりましょう。

なお、イラストは、大量の文書をひたすら「平成」→「令和」に訂正しているように見えますが、もちろん平成に結んだ過去契約書の「平成」という文字を今「令和」に訂正する必要は全くありません。
今年の5月1日以降の締結日なのに平成31年としてしまったものがあれば、それは明らかに間違えていますので、 (急ぐかどうかは別として) 形式的には訂正の対象となり得ます。

※本記事に使用したイラストの著作権は「いらすとや」に帰属するものです。