046_そのときに

ある日、あなたは上司に呼ばれて言われます。
「あの件だけど、わからないように稟議書の2枚目差し替えておいて。あの場にあの方はいなかったことにして、こっちが出した結論は書かずに、とりあえず検討をしますっていうテイでリバイスしてよ。あ、差し替える前にこっちで確認するんでWordのファイル送ってね」

なにがなんだかわかりませんが、まぁ「偽れ」ってことなんでしょう。
こういう感じで、普通に、突然に、そのときは来るかもしれません。

誰の指示?どうして今頃?結論のない稟議って何?
いろいろな疑問が巡っても、言える雰囲気ではない。
言ったら、確実に、「空気読め、バカ」

昇格のかかった評価の時期です。
上がれば、月々の給与は確実にアップします。
同期はみんな去年に昇格しているのに、自分だけ遅れていることもあります。
家族に直面するイベントも目白押しで、お金が必要です。見栄もあります。

でもそのときに…!

「申し訳ございません。私には事実と異なる修正はできません」
「は?何言ってんのお前。ていうか誰に言ってんの?」

でも怯まないで!!

「申し訳ございません。私にはできません」
「ふざけんなお前!!お前、もう二度とチャンスないかもしんないぞ」

それでも!!!

「申し訳ございません。できません」
「いい!他のやつに頼む」


このように、あなたが態度を貫くことが、
「隠さない」を「する」です。


その後、このことは大問題となります。
もともとの不正事実はもとより、この「改ざん行為」に世論が大紛糾します。
報道、報道、報道、信用失墜・・・

あなたは、昇格をフイにしたかもしれません。しかし
「あのとき自分は間違ったことはしなかった」
ということを生涯誇りに思いながら、生きていくことができます。

これがコンプライアンスですよ。
決して、1年に1回数時間の退屈な研修を聞くことがコンプライアンスではありません。

※この話はフィクションです
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