027_会社財産の侵害

金庫から会社の現金を盗んだとか言うと「そりゃけしからん」となるんですが、会社の電源コンセントに自分のスマホの充電器を勝手にぶっさして充電することについては「いいじゃんそれぐらい」になってませんか?

刑法では、横領、窃盗、詐欺、強盗などは「財産犯」と言われます。財産犯の保護法益は「財物」や「財産上の利益」です。これはとても分かりやすいですよね。
人様や会社の財物を盗取したりすれば、そのひとや会社の財物が侵害される。
だからけしからんと。

そして、ここでいう財物に「少額ならOKよ♪」みたいな免除ルールはありません。2012年の大阪高裁判決で、“10円の賽銭泥棒に懲役1年”という実例もあります。
つまり、会社の金庫からどっさり現金を盗もうが、会社が買ってる電気を無断でちょっぴり盗もうが、まっっったく同じ犯罪です。

ちなみに電気と現金は違うのかというと、いずれも窃盗の客体になることにおいて変わりはありません。刑法に有名な条文があります。

第二百四十五条 この章の罪については、電気は、財物とみなす。

「この章」と言っているのは、刑法第三十六章「窃盗及び強盗の罪」のことです。

会社の財物を盗んではいけません。
☑ 会社の文具や備品を家に持ち帰った
☑ 私的な費用をあたかも経費として会社に申請して振り込ませた
☑ 嘘の経路を申請して交通費を余計にもらった
☑ 買いもしない定期代を申請して支給された金を懐に入れた
☑ お店にある商品見本を勝手に自分のものにした
☑ お店の貯蔵庫や冷蔵庫にある食材を勝手に食べた


「公私混同」とかいう甘っちょろい言葉でオブラートに包んではいけません。すべて財産犯の構成要件に該当する可能性があります。そうすると、やった役員や社員はすべからく犯罪者です。

「ちょっとならいいよね」
「あの人もやってたし」
「今まで誰にも言われてないから」

こういう意識の積み重ねが巨大な不正となりますし、そもそも積みかさなる以前に、ひとつひとつの行為は犯罪です。

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