043_嘘をつくこと

友人に対して嘘をつくことは許されるのでしょうか?
たとえ友人であっても、人に判断を誤らせるようなけしからん嘘については、決して許してはいけないと思われます。
でも、ときには、その友人のことを思って、かわいい嘘をついたりする場合があるかもしれません。あっと驚かせるためにサプライズ!的な嘘などもあり得ますね。
嘘は程度によって許されたりするのでしょうか?

まず、嘘は犯罪でしょうか?

(詐欺)第二百四十六条 人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。
2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

刑法

刑法の詐欺罪の条文を見る限り、「欺く」つまり嘘をつくだけではなさそうです。「財物を交付させ」ることで、刑罰が課せられることとなっています。
ですので、友人に対するかわいい嘘なら、刑法246条が適用されるようなことはなさそうです。

でも、もちろん法律は刑法だけではありません。

第百九十七条 次の各号のいずれかに該当する者は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(中略)
四 第二十七条の二十二の三第一項又は第二項の規定による公表を行わず、又は虚偽の公表を行つた者

金融商品取引法

こちらは金融商品取引法です。第二十七条の二十二の三とは、業務等に関する重要事実の公表等に関する規定です。
虚偽の公表は厳罰です。「十年以下の懲役」の部分は刑法の詐欺罪と同じ重さです。金融商品取引法の登場人物は、特に財物を交付させなくても、虚偽の公表を行うことで、刑法の詐欺罪と同じ重さの罪を負うということです。

金融商品取引法以外にも、企業を取り巻く様々な法令が、虚偽の事実を公表したり、報告したり、登録したり、届け出するような場面において、厳しい規律が課せられています。

しかし、どの法令も該当しない場面であれば、企業が嘘をつくことは許されるのでしょうか?
企業が、法令違反ならないような嘘をつくこと。これは許されますか?

このことが、企業コンプライアンスで、一番大切なテーマです。

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