031_保健機能食品のことを整理してみる

特定保健用食品(いわゆるトクホ)や機能性表示食品などの食品は、医薬品等とは異なるものです。

美容に関する情報を取り扱うメディア(以下「美容関連メディア」といいます。)においては、これら 保健機能食品 を取り扱う際に、法令上の規制等が適用になるのでしょうか。本記事では、保健機能食品について、美容関連メディアに記事を掲載する際に、表示に関する法令上の規制との関係をどのように考えるべきかを整理していきます。

ただ、あくまでもこの記事は記載内容を保証するものではありませんので、ヒントとして活用するにとどめていただき、実際には専門家に確認のうえ、業務を遂行してください。

保健機能商品の位置づけ

食品とは

保健機能食品も食品の一類型となりますが、そもそも食品とは、法令上どのように定義されているのでしょうか。

食品表示法(定義)

第2条第1項 この法律において「食品」とは、全ての飲食物(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第二条第一項に規定する医薬品、同条第二項に規定する医薬部外品及び同条第九項に規定する再生医療等製品を除き、食品衛生法第四条第二項に規定する添加物(第四条第一項第一号及び第十一条において単に「添加物」という。)を含む。)をいう。

非常にシンプルな定義であり、全ての飲食物から医薬品等を除き、添加物を含むものが食品とされています。ここで除くべき医薬品等とは何かが問題となりますが、この点については、別のにて詳細に解説しています。

美容食品と医薬品等との関係

保健機能食品とは

医薬品等と食品の法令上の違いは前述のとおりですが、もっとわかりやすく言えば、病人に対するものが医薬品等であり、そうでないものが食品です。

食品の中でも特に健康の維持増進に資する食品が存在しますが、このような食品を日常の食生活に取り入れれば、病気になるリスクを未然に低減することができます。とはいえ、食品メーカーがおのおの好き勝手に健康の維持増進を訴求した食品を作り出し、業者が販売するようでは、消費者は混乱してしまいますし、何を信用してよいかわからない状況が生まれます。

そこで、健康増進法は、「特別の用途に適する旨の表示」をする食品については、国の許可が必要とされています(同法26条)。そして、この許可制度による食品が「特定保健用食品」です。また、国の許可はいらないまでも国への届出が必要な食品が「機能性表示食品」であり、届出すらいらない代わりに国の定めた限られた表示しかできない食品が「栄養機能食品」です。

保健機能食品の3つの類型の特徴を簡単に整理すると次の表のとおりとなります。

  特定保健用食品 機能性表示食品 栄養機能食品
国との関係 国による許可が必要 国に対する届出でOK 特になし
成分 “体の中で成分がどのように働いているか”という仕組みが明らかな成分 左記成分より栄養成分を除いたもの ビタミン(13種類) ミネラル(6種類) 脂肪酸(1種類)
許される表示 健康の維持、増進に役立つ、又は適する旨の表示 左記表示より疾病リスクの低減に資する表示を除いた表示 栄養成分の機能表示(国の定めたの定型文に限る)
マーク なし なし

保健機能商品の表示規制

食品表示法の表示規制

保健機能食品は、食品表示法に基づく食品表示基準によって、表示の規制がされています。さきほど掲げた表組にも記載しましたが、まず、特定保健用食品は、「栄養成分」を含む、「疾病リスク」の低減に資する表示をすることが許されています。

一方、機能性食品は、特定保健用食品に許された「栄養成分」を含んではならず、「疾病リスク」の低減に資する表示をしてはなりません。

そして、栄養機能食品は決まった成分を決まった表示をすることが許されているにすぎません。

なお、機能性食品も栄養機能食品も、その食品の自社でしっかりと機能を検証し、根拠のあることを自己認証することが大前提となります。この機能の自己認証結果を届け出るかどうかが機能性食品と栄養機能食品の違いです。

それでは、この表示規制の主体者、つまり表示義務者は誰になるのでしょうか。

食品表示法(食品表示基準の遵守)

第5条 食品関連事業者等は、食品表示基準に従った表示がされていない食品の販売をしてはならない。

条文を見る限り「食品関連事業者等」が食品表示基準の表示義務者であることがわかります。それでは「食品関連事業者等」とはいかなる者を指すのでしょうか。

食品表示法(定義)

第2条第3項 この法律において「食品関連事業者等」とは、次の各号のいずれかに該当する者をいう。

一 食品の製造、加工(調整及び選別を含む。)若しくは輸入を業とする者(当該食品の販売をしない者を除く。)又は食品の販売を業とする者(以下「食品関連事業者」という。)

二 前号に掲げる者のほか、食品の販売をする者

簡単に言えば、食品メーカーと食品販売業者が食品表示基準の表示義務者となります。

美容関連メディアは表示規制の対象とはならないのか

それでは、食品メーカーにも食品販売業者にも該当しない美容関連メディアに対しては、法令の表示規制は存在しないのでしょうか。食品表示法の適用を受けないのは前掲の条文から明らかですが、ここで、「不当景品類及び不当表示防止法」のおける不当表示の規制にかかるかどうかを整理したいと思います。なぜなら消費者庁は、2017年11月、実に16社の事業者に対して、機能性表示食品に関する「体験談」や「個人の感想等の打ち消し表示」等の広告表示について、同法に基づく不当表示を一斉に認定し、措置命令を発出したからです。仮に美容関連メディアが同法の適用対象となる場合は、重大な法令違反リスクが存在すると言えます。

不当景品類及び不当表示防止法(不当な表示の禁止)

第5条第1項 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。

一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの(以下省略)

ここでいう「事業者」については、同法第2条第1項では「商業、工業、金融業その他の事業を行う者」とされているため、非常に広い概念となります。とすると重要なのは、「自己の供給する商品又は役務の取引について」の解釈です。これに美容関連メディアは含まれるかが問題となります。

この点について、同法の所轄官庁である消費者庁は、ホームページ掲載の「表示に関するQ&A」において以下のように説明しています。

表示に関するQ&A

Q3 当社は広告代理店です。メーカーとの契約により、当該メーカー商品の広告宣伝を企画立案した結果、当該商品の品質について不当表示を行ってしまいました。この場合、広告代理店である当社も景品表示法違反に問われるのでしょうか。

A 景品表示法の規制対象である「広告その他の表示」とは、事業者が「自己の」供給する商品・サービスの取引に関する事項について行うものであるとされており、メーカー、卸売業者、小売業者等、当該商品・サービスを供給していると認められる者により行われる場合がこれに該当します。

他方、広告代理店やメディア媒体(新聞社、出版社、放送局等)は、商品・サービスの広告の制作等に関与していても、当該商品・サービスを供給している者でない限り、表示規制の対象とはなりません。しかしながら、広告代理店やメディア媒体は、広告を企画立案したり、当該広告を一般消費者に提示する役割を担うことにかんがみ、当該広告に不当な表示がなされないよう十分な注意を払ってください。

https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/faq/representation/#q3

美容関連メディアが、消費者庁の回答にあるところの「メディア媒体」の説明にある「等」に該当すると考えることは特段無理のあることではないと考えられますので、美容関連メディアがこの回答の射程範囲にあると考えても差し支えないものと考えられます。

すなわち、美容関連メディアは、景品表示法の規制を直接受けるわけではないものの、「広告を企画立案したり、当該広告を一般消費者に提示する役割を担うことにかんがみ、当該広告に不当な表示がなされないよう十分な注意を払」うことが求められるということになります。したがって、かかる消費者行政庁の見解に鑑み、美容関連メディアにおいても、同庁の不当表示に関するガイドラインを参考に自主的に表示を規律すれば足りるものと考えられます。

まとめ

このように、保健機能食品には、許可制度による「特定保健用食品」、国の許可はいらないまでも国への届出が必要な「機能性表示食品」、届出すらいらない代わりに国の定めた限られた表示しかできない「栄養機能食品」があります。

そして、いずれも食品表示法に基づく食品表示基準という表示規制や景品表示法の不当表示規制ありますが、美容関連メディアはいずれの法令も適用とはならず、規制を受けないこととなります。

この点は、医薬品等の誇大広告禁止が「何人も」とされている点と比べると大きくことなます。一般消費者への役割を鑑み、自主的な表示規律に従った表示をすればよいでしょう。

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