030_美容食品と医薬品の関係を整理してみる

美容食品の数々が インターネット通販サイトにたくさん並んでいます。お手軽に買える半面、店頭で買うときのように店員さんに質問をしたりすることも、サンプル品を試食してみることも思うようにできません。だからこそ、購入する前にネット上にその美容食品に関する詳しい解説があるととても役に立ちます。

しかし、美容食品に関して消費者向けに広告表示をするにあたっては、様々な法的な規制があります。医薬品や医薬部外品など(以下「医薬品等」といいます。)に該当する場合は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「薬機法」といいます。)に基づく厳しい規制を受けます。また、該当しない場合でも、あたかも医薬品等と誤解をさせる表現は禁止されています。

本記事では、主に美容に関する記事を取り扱うメディア(以下「美容関連メディア」といいます。)において、美容食品を説明するようなネット記事(以下「ネット記事」といいます。)に着目したうえで、薬機法に定める医薬品等との関連を説明していきます。

ただ、あくまでもこの記事は記載内容を保証するものではありませんので、ヒントとして活用するにとどめていただき、実際には専門家に確認のうえ、業務を遂行してください。

医薬品等に関する規制

医薬品等に該当するかどうかの基準

当たり前のことですが、美容食品は口に入れて摂取します。このように経口的に服用する物が医薬品に該当するかどうかは、薬機法の定義のほか、厚生労働省の制定する「医薬品の範囲に関する基準」(以下「判断基準」といいます。)に該当するかどうかで判断することとなります。具体的には、以下に該当する場合は、医薬品とみなされ、厚生労働大臣の許可を受けた者ででなければ製造できず(薬機法13条)、またその食品自体の承認(同法14条)も必要となります。

・判断基準に記載のある原材料が配合されている 例:アスピリン、タウリン他

・上記以外でも以下のいずれかを満たす

  • 医薬品的な効能効果を標ぼうするもの 例:便秘がなおる、体質改善他
  • 専ら医薬品的形状であるもの 例:錠剤、丸剤、カプセル、アンプル他
  • 用法用量が医薬品的であるもの 例:服用時期、服用量、服用間隔他

ここで重要なのは、判断基準に記載のある原材料が配合されておらず、メーカーとしては美容食品のつもりで製造したものであっても、上記①~③のいずれかを満たしたものは、医薬品と扱われる点です。このため、食品メーカーが製造した美容食品についても、その表記や形状次第で、いつでも無許可未承認の医薬品とみなされるリスクに直面し得るという理解が必要です。なお、医薬品と比べれば人体に対する作用が緩和であって、薬機法で定められるものの他、厚生労働大臣が指定するもの(例:ビタミン剤、カルシウム剤、のど清涼剤他)については、医薬部外品に該当します。

医薬品等の広告基準

医薬品と医薬部外品で、広告の基準が異なることはありません。医薬品等を広告するにあたっては、薬機法および厚生労働省の制定する「医薬品等適正広告基準」に従って、名称、製造法、効能効果、成分・原料、用法・用量などの表記方法や、保証表現、最大級表現の禁止等など、表示方法等について厳格な規制に従う必要があります。

美容関連メディアのネット記事は薬機法の適用を受けるか

美容関連メディアの運営会社は、医薬品等のメーカーでも販売会社でもありませんが、このような会社がメディアに掲載するネット記事には、薬機法に違反するリスクがあるのでしょうか。まず、薬機法の条文を引用します。

医薬品医療機器等法(誇大広告等)

第66条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。

2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。

3 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。

医薬品医療機器等法(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)

第68条 何人も、第14条第1項又は、第23条の2の5第1項若しくは第23条の2の23第1項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第14条第1項、第19条の2第1項、第23条の2の5第1項、第23条の2の17第1項、第23条の25第1項若しくは第23条の37第1項の承認又は第23条の2の23第1項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。

66条が承認された医薬品等の誇大広告を禁止しており、68条は未承認医薬品の効能効果等の広告を全面的に禁止していますが、ここで使われる「何人も」という用語が重要です。「何人も」とされている以上、どんな人でもやってはならないこととなり、どんな人でも同条に違反する可能性があります。したがって、美容関連メディアの運営会社も含まれることとなります。

次に、ネット記事が同条でいうところの「広告」にあたるかという点ですが、薬機法における広告の定義については、平成10年9月29日付の厚生省医薬安全局監視指導課長が発信した通知において、以下の3点をすべて満たす場合であることが明記されています。

  • 顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昴進させる)意図が明確であること
  • 特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
  • 一般人が認知できる状態であること

まず、②についてはネット記事でも商品名を特定しないと説明できないので該当すると考えられますし、次に、③についてはネット記事である以上常に該当します。そして①については、たいていネット記事の場合、お得な購入方法に言及したり、購入できるサイトにリンクを貼ったりしていますので、多くの場合は該当することになると思われます。アフィリエイト収入や代理店手数料の獲得は、顧客誘引の結果として得られるビジネスですから、当然と言えば当然です。

あえて言えば、顧客誘引の意図が感じられない客観的な記事であったり、商品名が分からないように伏せて書かれていたり、限られた会員のみしか閲覧できない等あれば、非該当となり得ますが、このようなことをメディア運営会社が行う経済的なメリットは考えにくいため、美容関連メディアのネット記事をあげる以上は、薬機法の逃げ道はないものと考えた方が無難でしょう。

医薬品等ではない美容食品を広告する際のリスク

不適切な表記事例

美容関連メディアなどが、医薬品等の広告をするネット記事を掲載している場面はほとんど見かけません。これは、医薬品等のネット販売の範囲はまだまだ限定的であり、その広告表示に関しても厳格な規制が存在することが広く認識されている結果でしょうか。

一方、医薬品等には該当しなさそうな美容食品やサプリメントなどに関するネット記事を目にする機会は非常に多いです。このような記事において、“医薬品等ではない食品だから”という油断のもと、ついつい医薬品等と誤認させるような表現をしてしまうリスクは、相応に発生しやすいと考えられますので、注意が必要です。

事例として、東京都福祉保健局が「東京都において不適であると指摘したもののうち特に御注意いただきたいもの」として公表している表示をいくつかピックアップして紹介します。

不適内容 東京都解説
・お肌やおなかの調子はどうですか (食物繊維含有飲料) 身体の特定部位(肌、おなか)に作用を及ぼすかのような表現は、医薬品的な効能効果に該当するため広告できない。
・眼精疲労の予防や視力回復など、目の健康食品として注目 ・視力が気になる方に!目を使う方に!目の栄養 (ブルーベリー含有食品) ・疾病の治療又は予防を目的とする表現は、医薬品的な効能効果に該当するため広告できない。 ・身体の組織機能の増強、促進を目的とした表現は、医薬品的な効能効果に該当するため広告できない。
・血液をサラサラにする効果があります。滋養強壮効果があります (ダイエット等を標榜するお茶) ・身体の組織機能の増強、促進を目的とした表現は、医薬品的な効能効果に該当するため広告できない。

http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/smph/kenkou/iyaku/sonota/koukoku/huteki.html

いかがでしょうか。前述の医薬品の該当基準のひとつに「医薬品的な効能効果を標ぼうするもの」というものがあったと思います。これに基づいて考えると、

“医薬品的な効能効果を標ぼうするものは医薬品である→医薬品でない食品については医薬品的な効能効果を標ぼうしてはならない→したがってかかる食品について医薬品的な効能効果に該当する表現は不適である”

という非常に単純なロジックに過ぎないのですが、ネット記事で熱心に美容食品などの説明をするにあたって、ついつい効能効果に踏み込んだ表現をしてしまいがちですので、注意が必要です。

どうすれば不適切な表記を防げるのか

医薬品等の広告をするにあたって不適切な表記を防ぐためには、前述の「医薬品等適正広告基準」に従えば問題ありません。一方で、医薬品等ではないものについて、医薬品的な効能効果に該当しない表現に抑えるための厚生労働省基準は見当たりません。医薬品等でない以上、同省が基準を作成するいわれはないのかもしれません。しかし、前述のように、食物繊維含有飲料について「お肌やおなかの調子はどうですか」と表現しただけでも不適と判断されますので、行政機関の公表する違反認定事例の集積を参考に個々に判断することが重要です。薬事分野の知見が豊富な専門家のリーガルチェックを受けることが必要でしょう。

まとめ

このように、美容食品か医薬品かの分かれ道は成分の違いだけではなく、美容食品として作ったものでもその表記や形状次第でいつでも無許可未承認の医薬品とみなされる可能性がある点に理解が必要です。そして、美容関連メディアのネット記事で、医薬品等ではない美容食品を説明する際も、医薬的な効能効果に踏み込んだ表記をすれば、薬機法違反を問われるリスクがありますので、専門家のチェックを受けることが重要です。

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